LGBT 同性パートナーとの相続について

今回の判決はそれぞれの思いがあるだけにとてもやりきれない気持ちでいっぱいです。
LGBT に関しましては専門に扱ってらっしゃる先生方がいらっしゃると思いますが、もし弊所にてご相談頂く機会があるとしたら、
どのようなアドバイスができるだろうか。
そのようなことを皆で話し合いました。



同性パートナーの相続を認めず。 大阪地裁判決 2020年3月

同居生活を40年以上続け、急死した同性パートナーの火葬への立ち会いを拒否され、財産を相続出来なかったのは違法だとして、71歳の男性が親族に財産の引き渡しや700万の損害賠償を求めた訴訟の判決にて大阪地裁は27日請求を棄却しました。
裁判長はパートナーが同性愛者であることや男性との関係を隠していたことを指摘。
親族は男性について”パートナーが雇用している従業員で、同居の居候と認定していた。”とし夫婦同様の関係にあると親族が認識していた証拠はなく、不法行為は成立していないと判断しました。
男性側は生前に財産贈与の合意があったとも主張したが、裁判長は”男性の供述以外に証拠がない”として合意の成立を認めなかった。
判決によると、2人は遅くとも1974年ごろから同居。
男性はパートナーが代表を務める事務所でデザイナーとして働いていたが、パートナーが2016年75歳で急死してしまいました。(新聞記事より)

✳もっと細かな内容は”LGBT 関連ニュース”にて載っておりますのでご参照ください。


同性のパートナーに財産を残すには? 


●お互いを守るために遺言書を。    そして遺言には祭祀主宰者の指定を。

同性カップルの場合は一方が亡くなっても法定相続が起こりません。 共に築いた財産であっても守るすべがありません。
遺言を残すことで住んでいる家であり財産などを守ることができます。
(ただし✳遺留分に関しては法律で決めらせていますのでご注意ください。)
そして上記の件にもあるように”火葬の立ち会いを拒否された”このような耐え難いことへも回避できます。(祭祀主宰者の指定)
遺言にて祭祀主宰者を指定しておくことで葬儀や埋葬、法事などを執り行うことができます。
お墓も祭祀主宰者が承継できますしお骨ももちろん含まれます。
本来なら喪主であるパートナーの葬儀を拒否されたりお骨を渡してもらえないなどを防ぐことができます。


 遺留分とは

遺言書を残していても子供には本来の相続分の分の1、子供がなく親が存命の場合は親に本来の相続分の3分の1の権利があります。(子供がなく相続人がきょうだいのみの場合は請求権はございません。)
子供や親が遺留分を放棄してくれればいいのですが。。。   なかなかそのようなケースは稀でしょうか。

 養子縁組を活用する。(有効でない場合もあります)

養子縁組は一つの対策として同性カップル間やそれ以外でも考えるケースがあると思います。
なぜなら税務上では様々な控除、財産評価での特例がありますし家族ですから医療関係や介護、色々なサービスや手続きがスムーズになるでしょう。
但し、同性カップルにおいてはお互いの同等な立場という点では親子になる為抵抗があるのではないでしょうか。(同い年はダメです。)
※養子縁組をしても認知症になってしまうと親子でも代理ができない場合がありますのでご注意ください。
そうなる前に委任契約を是非お勧めいたします!

                                     ●暦年贈与を活用する。

暦年贈与を使って財産を渡すことができます。暦年贈与は年間110万円までは非課税です。両者間で贈与契約を締結し、必要であれば贈与税の申告をすることにはなりますが、遺言を作成するよりも手続きが簡単です。死後にもめる可能性が低くなるかと思います。
 

贈与は【あげた】【もらった】という意思表示をする必要があります。パートナーに受け取ったという認識がない場合には贈与とは言えません。
死後に見つかった場合には相続財産財産として相続人が相続してしまいます。
必ず書面で行う必要はありませんができれば契約書を作成したいところです。 

             ●死亡保険金を活用する。

死亡保険金は特定の人物を受取人に指定できます。 また受取人の固有財産です。遺留分侵害請求の対象にもなりませんので、自分の相続人と争わずにパートナーに現金を残すことができます。 


 

保険会社によっては認めていない場合がありますのでご確認ください。
死亡保険はみなし相続財産として相続税の課税対象です。パートナーは相続人ではありませんので非課税枠の適用はありません。
さらに相続税の2割加算の適用もありますのでご確認ください。
受取の際にも必要な書類がありますので事前に確認をしておいたほうがいいかもしれません。 

            ●家族信託を活用する。

 AとBはLGBT(性的マイノリティ)で一般的な夫婦と同様の生活を送っています。Aは何かあった時にはBに財産を残しておきたいと考えてます。

Aの財産を相続した同性パートナーのB➡ Bの死後 ➡Aから相続した財産もすべてBの相続人に渡ります。
会社を二人で経営していたら?住んでいる家がAからの相続であったら?
AからしてみればBには残してあげたいけれどもBが亡くなった後に全く知らないBの親族に渡ってしまうのは避けたいはずです。
それを解決してくれるのが家族信託です。
Bの死後は、受益権をAの親族が取得するという信託契約を締結すれば、Bの生前はBは受益権の収益を維持でき、死後にはAの親族に受益権を戻すことが出来ます。

 

税務上のリスクなど税理士に確認が必要です。親族を交えての契約となりますので親族間のコミュニケーションが取れているかどうか。
専門家と細かな話し合いをし締結していくこととなります。