相続・税額控除

          一定条件に該当する場合にその相続人の税額から一定額を差し引くことができることを言います。

相続税では6種類あります。

相続税を減らすことができますので内容を確認してみましょう。


【税額控除の順番 ①➡⑥ 】

                        ①贈与税額控除    
                        ②配偶者の税額軽減
                        ③未成年者控除
                        ④障害者控除
                        ⑤相次相続
                        ⑥外国税額控除

①贈与税額控除

     暦年課税制度 ※令和6年1月1日以後に改正あり👇

                            基礎控除・毎年110万円 
                    財産を贈与した人(贈与者)      👉  特になし   
                    財産の贈与を受けた人(受贈者)  👉  特になし   

基本的には相続財産には加えない。
相続開始前3年以内の贈与財産は相続財産に加算
   👇(改正)
相続開始前7年以内の贈与財産は相続財産に加算
※また、相続開始前7年以内から3年以内の4年間の間に贈与により取得した財産については、総額100万円まで相続財産に加算されない措置が講じられます。
※改正案 適用時期令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税に適用 

暦年課税から相続時精算課税制度への移行ができる。 
長い年月をかければ多くの財産を動かせる。(贈与税は単年度で完結となる)
実の子どもだけでなく、子供の配偶者や孫・ひ孫・お世話になった人などへ財産を渡すことができる。

注意)孫に贈与する場合、実の子が先に亡くなり孫に代襲相続された場合は、孫へ生前贈与した分は
相続財産への加算対象となります。

 


          相続時精算課税制度 ※令和6年1月1日以後に改正あり👇

特定の親族間の贈与について総額2500万円までの贈与にかかる税金を相続時まで先送りできる制度です。
あくまで先送りなので基本的に節税になるものではありませんが後に相続税の負担が発生しなければ実質的に非課税にて2500万円までの財産を贈与できることとなります。

60歳以上の父母又は祖父母から18歳以上の子・孫への贈与で利用できます。

【適用対象者】
財産を贈与した人(贈与者)60歳以上の親または祖父母
財産の贈与を受けた人(受贈者)⏩18歳以上の子又は孫である推定相続人
✳年齢は贈与の年の1月1日現在
     
贈与する財産の種類に制限はなく現金や不動産でも問題ありません。

選択した年以降はその親族間の贈与はすべて相続時精算課税が適用となり暦年課税(110万円控除)は使えません。

総額で2500万円を超えた金額には一律20%の贈与税がかかります。 相続時の相続税にて相殺します。
相続税の計算の際には贈与した時の価格にて評価されますので将来値が上がるであろう財産の贈与であれば相続時の税金を抑えることができます。 但し110万円の基礎控除はつかえません。
110万円以下であっても贈与のあった年には申告が必要となります。この制度を選択した場合取り消しがききません。

【この制度を利用し有利になる可能性がある場合】

                 ・今後の区画整理や都市開発事業で確実に値上がりの期待ができる土地
                 ・値上がりが見込まれる株式
                 ・贈与時点より評価が上昇しそうな資産、贈与後に評価が落ちず収益が見込めそうな資産

 ※改正案 令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に適用
 
1.相続税精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、現行の基礎控除とは別途、課税価格から基礎控除110万円を控除できることとするとともに、特例贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる当該特定贈与者から贈与により取得した財産の価格は上記の控除をした後の残額とする。

※令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用

2.相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した一定の土地又は建物が当該贈与の日から当該特例贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限までの間に災害によって一定の被害を受けた場合には、当該相続税の課税価格への加算等の基礎となる当該土地又は建物の価額は、当該贈与の時における価額から当該価額のうち当該災害によって被害を受けた部分に相当する額を控除した残額とする。

※令和6年1月1日以後に生ずる災害により被害を受ける場合について適用


 結婚・子育て資金の贈与 ※改正案 👇

 非課税枠1000万円(結婚費用は300万円) 
 贈与者(贈与する人) 父母・祖父母など(直系尊属)
 受贈者(受贈される人)18歳以上50歳未満(直系卑属)合計所得が1000万円以下 
 受贈者が50歳に到達の場合 贈与税の対象
 贈与の対象範囲結婚費用(婚礼・住居・引越) 子育て費用(妊娠・出産・子の医療保育費不妊治療など) 
 適用期間2023年3月31日まで ➡2025年まで延長

※改正案 令和5年3月31日までが期限であったが2年延長にて決定。

直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、受贈者が50歳に達した場合等において、非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額に贈与税が課せられるときは、一般税率を適用することとした上、その適用期限を2年延長する。

※令和5年4月1日から令和7年3月31日までの間に取得する信託受益権等に係る贈与税について適用

直系尊属から直系卑属への【結婚・子育て資金】に充てるための贈与であること。
受贈者は金融機関等(信託銀行・銀行・証券会社)と結婚・子育て資金管理契約(以下「契約」といいます)を締結し、契約に基づき受贈した金銭等の預入などをし、金融機関等を経由して「結婚・子育て資金非課税申告書」を受贈者の所轄税務署に提出すること。
(贈与税の確定申告書の提出は不要です) 

結婚関係資金 出産関係資金 育児関係資金
会場費・衣装代・飲食等の挙式費用
賃借する新居の家賃・敷金など
不妊治療費・妊婦検診費・出産費用・産後ケア費用など 子の医療費・子の保育費(ベビーシッター代を含む)など

契約の期間中に結婚・子育て資金を支出した場合は、領収書などを一定の提出期限までに金融機関等に提出する必要があります。
金融機関等では提出された領収書に基づき結婚・子育て資金口座の残高を管理します。【管理残高】 

 終了の事由 終了の日
①受贈者が50歳に達した場合  50歳に達した日
 ②受贈者が死亡した場合     死亡した日
     ③口座残高が「0」で、その口座に係る契約を終了させる合意があった場合  合意に基づき終了する日

尚、表の②以外の場合には終了の日の管理残高が終了した年の贈与税の課税価格に算入されます。
※口座残高と管理残高は異なる場合があります。 

贈与者が契約期間中に死亡した場合は、金融機関等へ「死亡した旨の届出」が必要になります。
贈与者が死亡した日の管理残高が相続等により取得したものとみなされ、相続税の対象となります。
受贈者が孫等である場合には相続税の2割加算の規定が適用されます。

  教育資金の贈与 ※改正案 👇

非課税枠  1500万円(学校以外への支払いは500万円)
贈与者(贈与する人)  父母・祖父母など
受贈者(受贈される人)  30歳未満の子・孫(合計所得が1000万円以下)
贈与の対象範囲  教育資金(入学金や授業料・塾・習い事など)
適用期間  2023年3月31日まで

 ※改正案 令和5年3月31日までが期限であったが3年延長にて決定。

1.信託等があった日から教育資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡した場合において、当該贈与者の死亡に係る贈与税の課税価格の合計額が5億円を超える場合には、受贈者の年齢などに関わらず、残高が相続財産に加算される。

※令和5年4月1日以後に取得する信託受益権などに係る相続税について適用。

2.受贈者が30歳に達した場合などにおいて、非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額に贈与税が課せられるときは、一般税率を適用することとする。

※令和5年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る贈与税について適用

3.本措置の対象となる教育資金の範囲に、都道府県知事等から国家戦略特別区域内に所在する場合の外国の保育士資格を有する者の人員配置基準等の一定の基準を満たす旨の証明書の交付を受けた認可外保育施設に支払われる保育料等を加える。

※令和5年4月1日以後に支払われる教育資金について適用。


 住宅資金の贈与

 非課税枠500~1000万円(住宅性能により異なる) 
 贈与者(贈与する人) 父母・祖父母など
 受贈者(受贈される人) 18歳以上の子・孫(合計所得が2000万円以下)
 贈与の対象範囲 マイホームの新築・中古住宅の購入・増改築
 適用期間 2023年12月31日まで

 利用件数が減少していることなどから廃止になる可能性あり。

②配偶者の税額軽減

【配偶者にのみ特別に認められている控除・配偶者の税額軽減について】

配偶者のみに認められている控除です。
配偶者の法廷相続分(相続人が配偶者と子供のみの場合には1/2)又は1億6000万円のどちらか多い金額まで認められます。
配偶者が取得する相続財産がこの金額以下であれば配偶者に対する相続税はかかりません。


婚姻の届け出をしている法律上の配偶者であることいわゆる内縁関係にある者には適用できません。
相続税の申告期限までにいさんが分割されていること争いなどがあり財産が未分割状態にあると適用されません。
配偶者が実際にどの財産を取得したのかを申告していること適用を受けると相続税額がゼロになる場合でも申告は必要です。


 一次相続と二次相続

相続では二度やってくると言われるように、二次相続までを想定した相続税の納税対策が必要です。
例えば、父が亡くなり配偶者でる母と子が財産を相続する場合の一回目の相続を一次相続といい父の相続を受けた後、配偶者である母が死亡した場合に発生する二回目の相続を二次相続といいます。
二次相続では《配偶者の税額軽減》特例が適用できないので相続税の負担が重くなりやすいため注意が必要です。

③未成年者控除 

           20歳未満の相続人が相続財産を取得した場合は未成年者控除により税額が軽減されます。

【適用要件】
・日本国内に住所があること。

【適用外】
・相続人以外の未成年者。
                                 ・遺贈を受けた場合。

控除額は20歳までの年数について1年当たり10万円
(1年未満の端数がある場合は切り上げ。2年2ヶ月➡3年)
※注意➡令和4年4月から成年年齢は18歳になります。(民法改正)

④障害者控除

障害のある相続人が相続財産を取得した場合は障害者控除により税額が軽減されます。

【適用要件】
・85歳未満で日本国内に住所がある。

【適用外】
・相続人以外の障害者
・遺贈を受けた場合

控除額は相続時の年齢によってかわります。
85歳までの年数について1年当たり一般障害者10万円(特別障害者は20万円)。

✳一般障害者とは障害等級3~6級
 特別障害者とは障害等級1~2級

未成年者控除と障害者控除のて共通
残った控除額があれば扶養義務者の相続税から差し引くことができる。

⑤相次相続控除

相続が発生してから10年以内(1年未満は切り捨て)に次の相続が発生した場合、相続税額から一定の金額を差し引くことができることを相次相続控除といいます。

最初の相続➡ 一次相続
  次の相続➡ 二次相続
 
相続が発生してから
10年以内に次の相続が発生
 ⏩亡くなった人が前回
の相続で相続税を納めている
 ⏩ 
相次相続控除を受けられる
相続の間隔が短いほど控除額を大きくなる。

⑥海外税額控除

海外にある財産を相続し相続税をおさめる場合、その国でも相続税に当たる税金が課せられる場合があります。
そのような場合に外国税額控除により一定額を控除できます。 二重課税を避けるための税金控除となります。